因習村の女子高生は、都会から来た転校生に憧れる。『うらんぼんの夜』川瀬七緒
ハードカバーの表紙から、薄気味悪さと夏のじめじめした感じが漂ってきて、「私向けの本だ」と思い、書店で見るなり買ってしまった。
あらすじはこうだ。地蔵を信仰する小さな集落で育った高校生の奈穂は、東京から来た転校生の亜矢子と親しくなる。一方、村の老人たちは余所者に対して異常なほど警戒心を募らせる。因習に強く縛られた人間関係に嫌気がさした奈穂は、村を出たいと強く思う。
田舎のうっそうと茂る山々、広がる田んぼ。一見のどかな風景に見えるが、村に伝わる風習や老人たちの行動で、不気味な因習村に様変わりする。
読んでいて、東京から来た亜矢子は何かを隠しているふうなのだが、村の老人たちが亜矢子を余所者扱いしていじめ抜いているように見えるせいで、亜矢子の謎などどうでもよくなってしまった。作者の思惑通り、亜矢子の味方になってしまった。オカルトっぽい、湿ったじめじめとした雰囲気が物語全体に漂っており、その雰囲気にだまされてしまい、最後に種明かしがされるまで、真相に気づけなかった。終始不気味だが、ラストも不気味で鳥肌が立った。
川瀬さんのデビュー作『よろずのことに気をつけよ』もおすすめ。