老いることと生きること。アレックス・シアラー『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』
いつもこのブログで紹介しているような、おぞましい殺人事件や不気味な幽霊が出てこない作品。でも、老いることや生と死について考えさせられる物語だ。
転校生のメレディスの正体は、年老いた魔女だった。中身を入れ替える魔法を使ったのだ。それを知った主人公の少女カーリーは、メレディスを助ける計画を立てる。
少女の体と老婆の体。入っている魂は同じなのに、体が違うというだけで全然景色が違って見える。
幽体離脱のシーンは、空を飛べて楽しそうに感じられたのに、自分の体に戻ろうとしたら魔女が入っていて、代わりに自分は老婆の体に入らないといけない。そのシーンがとても怖かった。
老いは誰にでも平等にあるはずなのに、少女だった自分が急に老婆の体になっていたら。間にある何十年もの楽しいはずの経験、あるいは苦しい経験もすることなく、あとは死ぬのを待つだけ。体は老いているのに、心は幼いまま。とても恐ろしかった。
アレックス・シアラーの作品は軽快なのにハートフルで、時にはどきどきわくわくして、どれも面白くて読みやすい。金原瑞人さんが訳しているからというのもあるかも。翻訳されているというのを感じさせないぐらい、日本語がなめらかですらすら読める。
ファンタジーだけれども、少し怖いのが好きな人におすすめ。