女の子の謎を説くのアイキャッチ画像
番外編

どうしてジブリの主人公は少女が多いの?『女の子の謎を解く』三宅香帆

 ※本書では人は死にません。

 自分が読んだ本の感想を誰かと共有したくて、ネットの考察サイトや読書家のエッセイ集を読んだりしたことってありません? 私はよくある。私が面白いと思った箇所を他の人も褒めていて共感したり、自分が気づかなかった面白さに気づかされたり。逆に自分はこう思ったけど、同じように思っている人っていないもんだなと感じたり。そんなふうに、「読んだ本を他の人と一緒に楽しめるメディア」ってネットやエッセイ集だけじゃないんだって、ここ最近気づきました。古くから、批評本っていうのがあるんです。

 高校生の時に、村上春樹について誰かと語りたかったけど、同じ年頃の子が読んでいるはずもなく。図書館で借りてきた村上春樹についての批評本を読んでみたけれど、よくわからなかった。私には馴染みのない言葉で書かれていて、専門用語も飛び交って、私向けの本ではないなと感じた。

 それから十年以上経って、同じ年頃の女の子(といってもアラサー)が書評家を名乗っているのをネットで目にし、ついに私向きの批評本が読める! と飛び跳ねて喜んだ。最初に読んだ三宅さんの本は、『それを読むたび思い出す』というエッセイ集だ。この本では、近所の古本屋に通う十代の頃の筆者のことなどが書かれており、「わかる〜。私も同じようなことして過ごしていた」と共感できた。

 『女の子の謎を解く』では、ヒロインが活躍する物語について、あらゆる角度からの考察が書かれている。「なぜ男女逆転モノって少女漫画に多いの」、「なぜ姉妹キャラって基本的にお姉ちゃんのほうが落ち着いているの」、「なぜ大人数の女性アイドルって流行ったの」というような、女性が主人公として描かれる小説、漫画、映画、アイドルなどにまつわる疑問と筆者なりの考察が記されているのだ。

 対象として取り上げられる作品には、私が読んだことのある作品や知っているものが多く、「うんうん、わかる」という感じで、読み進めることができた。書評本なのに堅苦しくなく、随所にはさまれるイラストがかわいらしい。また、ページ下部に配置されているデザインが、ノートに貼られたマスキングテープのようで、「女性が読みやすいこと」を意識した作りになっていた。

 本書を読むことで、今までなんとなく面白いなと思って読んでいた作品たちに対する解像度が少し上がった気がした。

 あとがきで、昨今のジェンダー論があるなかで、「女性」という縛りで書いてしまっていいのだろうか、と書かれていたが、いい! と思う。昔は、男性主人公の本が多くて、書評も男性視点のものが多かった。今、女性視点の書評が少ない中、いきなりジェンダーの垣根をとっぱらった書評を出されても、女性である私はないがしろにされている気がするから。

 読書感想文の一段階上に位置する書評。これからも、どんどんこういう本が増えてくれたらいいな。

楽天ブックス
¥1,650 (2024/04/18 15:33時点 | 楽天市場調べ)