じわじわと迫る気味の悪い恐怖…!江戸川乱歩『人間椅子』
江戸川乱歩の『人間椅子』は高校生ぐらいの頃に一回読んだことがあった気がするのだが、結末を忘れていた。文章の描写が細かくて素晴らしいと、大学の先生が言っていたのを思い出し、再読。
ミステリー小説家って、殺人鬼でもなければ、誰かに殺されたこともない。気持ち悪いと後ろ指差されるような犯罪を犯したこともない。では、どうしてあんなにリアルに物語を描けるのか。それは、想像力と日頃からの観察力とを総動員させ、詳しく丁寧に描写しているからだ。絵を描くデッサンと同じように、あたかも現実にあったかのように、書く訓練をしているからだ。
と、先生が言っていた気がする。
本書を読んでいると、椅子の中に人間が入っているなんてあるはずないのに、本当のことのように感じられる。
表題作の他に、『目羅博士の不思議な犯罪』、『押絵と旅する男』が収録されている。
『目羅博士の不思議な犯罪』は、人間の心理を猿の物真似に当てはめ、利用した犯罪が描かれている。でもこれ、もし警察に通報されても、犯人は捕まらないのではないか。そんな心理トリックが描かれているのだ。夜の上野の不忍池で、知らない男の気味の悪い話を聞いているという状況が最高に気味が悪かった。
表紙がかわいいので、インテリアにもよい一冊。