怖すぎる……。でもわくわくする。ファンタジーホラー小説の傑作!小野不由美『魔性の子 十二国記』
私は子供の頃、『おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ』や『エルマーの冒険』などを経て、『ハリー・ポッター』や『ダレン・シャン』、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの本を読んできた。つまり、ファンタジーといえば海外の児童向け小説だったのだ。
国内にも、荻原規子さんや上橋菜穂子さんといった素晴らしいファンタジー作品を書く作家さんはたくさんいたが、日本の小説に目を向け始めたのは大人になり始めてからだった。そして、なぜかそこを通らずに、小野不由美さんの作品にハマってしまった時期があった。
よくある学園もののローファンタジーかと思っていた。主人公が不思議な力の持ち主で、周りで不思議なことが起こる。そして、「あなたのいる世界はここではありません」と、ハグリッドのような役割の人がやってきて、主人公を素晴らしい魔法の世界へ連れ出してくれるのだ。
若干あっていたが、だいぶイメージと異なっていた。
まず、主人公の周りで起こる不思議なことというのが、かなり恐ろしいできごとなのだ。主人公の男子高校生、高里は幼少期に神隠しにあったことがあるという。それからというもの、彼をいじめた者は不慮の事故に遭う。周囲の人間からは、祟りだと恐れられていた。読み進めていくうちに、その事故はだんだんとエスカレートしていく。
わくわくするファンタジーの気分で読んだはずなのに、とても怖い。かわいい魔法生物なんて出てこない。高里くんの肩から幽霊のような腕が伸びているという描写も怖い。もふもふじゃなくて、作品全体がじめじめしているのだ。
だから子供の頃、日本の小説が苦手だったのかもしれない。なんだか全体的に暗いし、じめじめしている。ハッピーエンドかっていうと、そうでもない。ストーリーがわかりやすくて、ハッピーエンドな作品が多い、海外の小説ばかり読んでいたのかもしれない。
でも、大人になってからは、そういう作品ばかりだと物足りない。現実はハッピーなことばかりではない。たまには暗い小説を読みたいときもある。
『魔性の子』が面白すぎて、シリーズを何冊も読破してしまった。『十二国記』だけでは飽き足らず、小野不由美さんの他の作品にも手を伸ばしてしまった話はまたいつか書くとしよう。