山火事に囲まれた館ミステリー!阿津川辰海『紅蓮館の殺人』
館殺人が大好きです。今作の館は、山火事によって脱出できなくなってしまった閉じられた空間で、殺人事件が起こるという内容。そこに居合わせた二人の探偵。一人は元名探偵の現在会社員の女性で、もう一人は名探偵になりたい大学生男子の葛城だ。彼は他人の「嘘」を嗅ぎ分けられる能力を持つ。他人が何かを話し、そこに嘘が混ざっていると、嘘を吐いているとわかってしまうのだ。この探偵の助手的ポジションである、同じく大学生の男の子の視点から物語が進んでいく。
山火事が起きて、どうにかして館の隠し通路を見つけ出して脱出しなければいけないという命懸けのミッションがあるにも関わらず、葛城は殺人事件の犯人を見つけようとする。隠し通路を見つけるのを優先するか、犯人を見つけるのを優先するかで、避難してきた人たちと衝突する。
しかし、この避難してきた人たちもなんだか怪しいのだ。こんな怪しい人たちと手を組んで、避難経路を探すことができるのか。その点でもハラハラしてしまう。
そして、元名探偵はなぜか謎解きをしたがらない。彼女が探偵をやめてしまった理由はなんなのか。物語随所に気になる点が散りばめられている。
私のお気に入りキャラは、自分のことを「俺」という豪快な性格の小出だ。彼女は登場当初から嘘を吐いていて怪しいのに、どこか憎めない性格の持ち主なのだ。サバサバとした誰とも群れたがらない性格かと思いきや、他の誰も知らなかった情報を葛城たちに教えてくれたりする。敵なのか味方なのかわからないところが魅力的だった。
続編もあるようなので、読んでみたい。