こんな密室の作り方あるんだ!『屍人荘の殺人』今村昌弘
表紙の感じからライトノベルかと思って、手をつけていなかった作品。書店で平積みされているのを見かけても、美少女キャラクターが中心でミステリー要素が少ないんでしょと、勝手に決めつけ舐めてかかっていた。
ミステリー小説を選ぶ際、頭の片隅にはあったけど、でもなんかラノベっぽいしな、またの機会にしようと、思い続けて数年が経過。目ぼしい本を読み終わってしまってやっと手に取ってみたら、面白かった! 一巻を読み終えるとすぐ、二巻、三巻と手を伸ばしてしまった。
大学のミステリ愛好会を勝手に名乗っている明智恭介と葉村譲は、いわくつきの映像研究会の夏合宿に参加したくて、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子とペンションへ行く。
夏のペンション! このキーワードだけでわくわくして、ご飯三杯は食べられそうだ。絶対、誰か死ぬじゃん。
まあ、予想通り、人が殺される。しかし、その閉ざされた空間の作り方、殺され方は予想できなかった。まさか、こんな手があったか、と。普通、ペンションときたら、橋が落とされたり、車のタイヤがパンクしたり、大雪が降って外に出られなくなったり。そういう閉鎖空間の作り方になるんだけど、この小説は一味違うのだ。
その設定の特殊さに「まじかよ(笑)」と読みながら半笑いしてしまった。そうきたか、と。
次々と人が殺される状況の中、謎を解きながらとある脅威にも立ち向かわなければならなくて。続きが気になってしまい、ページを捲る手が止まらなかった。そこで死ぬの!? っていう登場人物もいて、復活を期待してしまったのもあって。夢中になって読み進めた。
また、この小説には親切なところがあった。登場人物の名前がその人物の特徴とリンクしているのだ。例えば、七宮兼光という人物は親の七光りで威張り散らしていたり、下松孝子という人物は背が高かったり。小説ってミステリーに限らず、登場人物が多いと名前を覚えられないことってありません? 「この人誰だっけ……? 確か、主人公の友達の……」というような朧げな記憶を頼りに読み進めていくということが多いのだが、この小説は覚えやすかった。登場人物の初登場回を探そうと躍起になってページを戻るといった行為をせずに済んだ。ありがたい。
私はミステリー小説で犯人を当てたことがない。ヒントが至る所に散らばっているのはなんとなく察するのだが、犯人を突き止めるまでに至らないのだ。コナンくんばりに「あれれ〜、おかしいぞ〜」と思っても、そこから先に進まないのだ。ミステリー作る人の頭の中ってどうなっているんだろう。一日中、トリックのこと考えているのかなぁ(小並感)。
そんなちんぷんかんぷんな状態で読んでいる私の大好きな部分、それは犯人の動機です! どんな理由で、殺人を犯したのかすごく気になる。共感できるものもあれば、そんな理由でと呆れるものまで犯人によって様々。犯人が十人いれば、十通りの動機がある。それが知りたくて、ミステリー小説を読んでいると言っても過言ではない。
だってさ、私たちの普段の生活って腹が立つことばかりで、法では裁けない、もしくは法で裁けるだろうけど、一般人が裁判までに持ち込むのには相当な労力を要することってたくさんある。それを、小説の中の犯人は復讐しちゃってくれてるんですよ。残忍な方法で。ちょっとはすっきりするでしょ。
この小説の犯人は何が恨めしくて殺人に至ったのか。それは、小説を読んで知ってください。
余談ですが、イラストの石工像は、なんかペンションの中に置いてあったかもと思い出しながら描きました。一応、美術系の学校出ているのに、デッサンが……。お恥ずかしい。まぁ、味がある絵ってことで許してください。
『屍人荘の殺人』、面白いのでぜひ!!
補足。映画化されていると知り、動画配信サイトで観てみた。小説の実写化って正直期待していなかったけど、神木隆之介くんが葉村役と聞いてイケメン見たさにチェックしてしまった。まぁ、内容は……うん……って感じだけど、神木くんが見れたしいっか☆