新しいジャンルのミステリー!?『先祖探偵』新川帆立
私は本書のタイトルを見てすぐさま「えっ、面白そう」と思った。「先祖探偵」という新しいジャンルのミステリーが書かれているのだろうか。これまで探偵ものといえば、誰かが殺されたり、生き別れた大切な人を探したり、不倫調査をしたりと、あらすじを読んでなんとなくイメージがわくものだった。しかし、本書を目にして、「先祖を探すって、どうやって? 徳川の埋蔵金を探すイメージ?」と、読む前からわくわくしてしまった。
母と生き別れた風子は、東京の谷中銀座で探偵事務所をひらいている。「曾祖父を探してほしい」、「先祖の祟りかもしれないから調べてほしい」といった依頼が舞い込む。依頼の調査をしながらも、自分の母親はどこにいるのだろうと常に思っていた。
先祖ってどうやって調べるんだろうと思っていたら、市役所に行って戸籍を取るとのこと。なるほどね! もしかしたら、自分の先祖も自分で調べられるんじゃないか。調べた結果、有名な武士が先祖だったらどうしよう……。そんなふうに、わくわくしながら読み進められた。
作者は東大卒の元弁護士。私は何年か前まで、東大卒の作家が書く小説が苦手だった。なんとなく、近寄りがたいイメージで、どちらかといえば、早稲田大学卒業の作家が書く小説を好んで読んでいた。「この小説読みやすくて、面白かった」と思い、作者略歴を見ると早稲田卒だったなんてことは、これまで何十回とあった。しかし、東大卒の作家が書く本を手に取る機会はなかなかなかった。
そんな私でも、設定の面白さに引き込まれ、本書をどんどん読み進めてしまった。喫茶店の上に探偵事務所があるなんていいな。私もお茶しに行きたい。
続編を期待している。