極楽に至る忌門
ホラー

因習村の生贄になるのは誰…?『極楽に至る忌門』芦花公園

 閉鎖的な村で起きる、怪異を描く一冊。

 東京育ちの大学生の隼人は、四国の山奥にある実家に帰省する友人に付き添うことになる。バスに乗ると、知り合いであるはずの村人たちは、目を合わせようとしない。実家には両親はおらず、祖母一人。「頷き仏を近づけた」と彼女が言うと、慌てた友人は失踪する。友人の実家で隼人は奇妙な電話を取る。その翌日、友人の祖母が亡くなる。

 物語冒頭で、「田舎だからって閉鎖的だとばかにするのはよくないことだ」と言っていた都会育ちの隼人が、田舎の因習村でわけのわからない事件に巻き込まれていくさまが怖かった。

 わらべ唄と猿神信仰、三つの捧げ物。各章、別々の人物の視点から物語が進行していき、そこに共通する村の異常さが不気味だった。ある者は村の信仰を気味悪がり、またある者はありがたがる。貧困や性犯罪、ジェンダーの問題などで被害を受け、心に傷を負った者が登場する。こういう怪異の物語では、よく怨霊と弱者がセットで登場する。弱者が虐げられた結果、怨霊になったり信仰に頼ったりする。今作もそれらが入り混じり、おもしろい物語になっていた。

 ジュマンジみたいな和製すごろくが出てきたシーンでは、少し笑った。のちの展開が怖すぎて、すぐに笑いはおさまったけど。薄気味悪い小屋の中で見つけた、古いすごろくをやろうなんてよく言えるよな。こういう、強気な女の子いるよな。と、思いながら読んでいた。

 角川ホラー文庫30周年記念でコミカライズが決定したそうなので、そちらも気になる。漫画になると、おどろおどろしさが増すから、怖くて読めないかもしれないが……。

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